【 オリエント急行殺人事件 】 Murder on The Orient Express
1974/英国/PARAMOUNT PICTURES CO/日本語字幕VHS/127分

監督:シドニー・ルメット 脚本:ポール・デーン
ポワロ・・・アルバート・フィニー

【 概要 】
ポワロはイスタンブールでとある事件を解決しロンドンへ戻る途中、ホテルで再会した旧友のビアンキと共にオリエント急行に乗ることに。

季節外れの満室だったが、鉄道会社重役であったビアンキのおかげで無事に乗車でき、快適な列車の旅を送れると思いきや、夢にうなされて大声を上げる男性や、部屋に侵入者がいたと騒ぐご婦人に悩まされるポワロ。そしてようやく朝を迎えたポワロを待っていたのは、十数カ所も刺し傷のある富豪の遺体だった。
スキャンダルを避けるため目的地に着くまでに犯人を見つけて欲しいと、ビアンキの頼みを受けて、ポワロは列車が雪で立ち往生をしているわずかの間に犯人を捜すべく、ビアンキと乗り合わせた医師の協力のもと調査を開始する。

調べを進める内に、被害者の過去に犯した大罪と、乗り合わせた乗客達との不思議な接点が浮かび上がる。
たどり着いた真相の前に、ポワロは良心との一騎打ちに挑むことになる。

【 感想 】
衣装、セット、音楽、そして俳優。すべてが美しい! 最高傑作と言っても過言ではない作品。
アルバート・フィニーは、滑稽なほどにおしゃれで隙のない服装と、ピンと張ったひげにワックスでテカテカの髪、という原作のポワロのイメージを忠実に再現しています。が、髪が真ん中分けじゃなのだけが残念。ヘイスティングスの七三分けまで真ん中分けにするようにと指導していたポワロさんが、自ら七三分けにするとは何事ですか!? ノン、ノンですよ。
それはともかく、他は本当に素晴らしいポワロ。しかし残念ながら、フィニーのポワロはこれ1作だけです。


冒頭に不幸な過去の事件の記録が、簡単にですが凄く効果的に流され一気に引き込まれます。イスタンブールの駅のセットも素晴らしく、そこに次々と訳ありげな乗客達が現れ、気分が盛り上がります。
でも、駅にいる東洋人達の中に「これは日本人……かな?」と首を傾げたくなる、妙な和装のご婦人方の姿があって笑えます。

この作品にはポワロの良き相棒ヘイスティングスは出てきませんが、代わりにビアンキと乗り合わせた医師が相方をつとめ、何気なく漏らした些細な一言でポワロを真相に導いたり、視聴者相手のお笑いを担当してくれています。

実は私が初めて見たポワロ映像作品は、この『オリエント急行殺人事件』でした。
しかし、小学低学年の頃に見たものですから記憶が曖昧で「外国の列車はなんて豪華なんだろう」と、事件とは別なことに感動して、誰が殺されたかとか犯人は誰だとか、肝心なことはほとんど覚えておりませんでした。
しかし、ポワロの決めつけるように問いつめる誘導尋問の仕方が怖かったようで、そのシーンだけは覚えていて、ポワロは苦手な探偵になってしまいました。

ただ、同じクリスティーの『ミス・マープル』はお気に入りでした。
女性探偵、しかもあんなおばあちゃんなのに凄い! と、尊敬していました。
そんなわけで私にとってアガサ・クリスティーと言えば『ポワロ』より『ミス・マーブル』でした。
デヴィッド・スーシェのポワロが始まって、ようやく「ポワロも面白いんだ」と思うようになり現在に至ります。

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